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「有毒女子通信」より

 ~毒娘 Visha Kanya~のお話し

有毒女子通信!
有毒女子通信!

先日解毒女子仲間から

素晴らしいお土産をいただきました。

それはピンクの小さな冊子。

題名はなんと「有毒女子通信」
京都で画廊を経営する方が

書いていらっしゃる小冊子です。

うーむ、東に解毒女子あれば西に有毒女子あり!
しかも今回のお題が「体液と人生」。

冒頭に寄せられた美学教授のエッセイがまた珠玉です。
ちょっと引用させて頂きましょ。

 

:::::::::::::::::::::
インドマウリア朝時代(紀元前317-180年)

にさかのぼるとされる説話に

「毒娘 Visha Kanya」がある。

現代のインドの文学や映画などにも登場するらしい。

 

この毒娘とは生まれながらに暗殺者として

育成される少女のことで、古代インド版「最終兵器彼女」的存在!?

この少女は赤子の頃から

少しずつ薄めた毒が与えられ

たいていの子はそれで死んでしまうのだが

なかには毒に対して完全な耐性をもった子が育つという。
その子が美しい娘に成長した頃には

彼女の体液はその毒の濃度が増し恐ろしい猛毒と化している。

 

ちょっとでもそれに触れた人間は

即死する、という魂胆だ。
その少女を首尾よく敵の王家に

嫁がせることができれば

歓びの新婚初夜が勝利の儀式となる。
::::::::::::::::::::::

 

カトリーヌ ド メディチ的 有毒女子!

カトリーヌ この時代の服は素敵
カトリーヌ この時代の服は素敵

正直、そんなことあるかい!

と疑った説話なのですが

そのあとふとした時にこんな話を思い出しました。

イタリアの大富豪メディチ家に

カトリーヌという悪名高き女性がいます。

彼女がフランス王家に輿入れしたことで

多くのイタリア文化がフランスへ渡ったと聞きます。

 

有名どころは皮製品。

そしてもうひとつは「毒薬」。

おかかえの調香師を連れてお嫁にいったらしいのだけど

この調香師がまた厄介もので

ありとあらゆる毒薬の開発と調合に貢献したらしいのです。

 

こんなエピソードがあります。

 

うら若き少女に甘美な夜伽にこれをつかうとよい、

と手渡した催淫剤入りの口紅。

彼女は歓びいさんで寝床で殿方をまちながら

唇に紅をさすとまもなく苦しみだし泡を吹いて卒倒。

 

そのあと訪れた男は寝室で息を引き取った

哀れな少女の姿をみて

まもなくその彼女が

「カトリーヌがよこした刺客」であったことに気づきます。


命を落としてもそれがどういった

原因なのかも不確定のまま、

曖昧に処理できた時代。

当時の毒薬の威力はいかほどであったかと思います。
カトリーヌ、おそるべき女です。

 

「最終兵器彼女」にならないために

美味しいお茶を飲んだり
美味しいお茶を飲んだり

 

現代の私たちは農薬や添加物や排気や薬、

いまでは放射能物質も

毎日すこしずつ蓄積して

自分でも気が付かないうちに

「最終兵器彼女」になってるのかもしれません。

 

有害ケミカルだけの問題ではなく

日々蓄積されるストレスや怒りや苛立ち、

負の感情の蓄積で

私たちはそれらをかかえきれず

(抱えると自分が自家中毒をおこしてしまうので)

時折それを放出しながら生きています。

 

職場で、学校で家庭で。

問題は特権的立ち位置にいるときに

小さな出来事を引き金におもわず

感情の結界を崩壊させてしまうこと。

 

部下のささやかな失敗をきっかけに

昨夜の家庭でおこった苛立ちを、

ついでに放出させてしまうなんて風景。

私もよくOL時代に遭遇しました。

 

部下はそんなときはすぐに解ります。

明らかに上乗せされた怒り。

不当な罵倒を受けながら

上司への信頼の架け橋を

一段ずつおろしてゆくのです。


人は明らかにある一定以上の毒を

内包することはできない。

そういうふうにできていると思います。

 

飽和状態に入る前に

どこかでバルブをゆるめて

毒を放出しなくては生きていけない生き物です。


ひとり静かに美味しいコーヒーをのんだり、

贅沢なチョコレートをかじったり

友人と美食を堪能したり。

嘘の忌引きで京都に庭園を眺めに行ったり。

 

毒は人生につきものだからこそ

自ら毒を抜く技法を

「美しく生きるたしなみ」としてもつべきである、

と思うのです。

 

人によって毒の抜き方は異なります。

だからこそ自分なりの解毒方法を

模索してゆかなくてはなりません。

それが毒多き人生を渡り歩く

必要不可欠な知性であると、思うのです。

 

解毒女子の会が

その知性を磨く場であったらいいなと

切に願う秋の夜長でした。


Toxic Girls Review  vol.8
「有毒女子通信 体液と人生 吉岡洋」より     2012 10 21